4.
「それにしても――」
 休み明けの昼下がり。
 ここ数日で、すっかり口癖になってしまったフレーズを呟きつつ、レオンは教室の窓から外を眺めていた。
 午後の授業が始まるまでは、まだ5分ほど時間がある。予習でもすればいいのだろうが、そんな気にもなれずにいた。
「――あれは、実際の出来事だったのかな……」

 レオンが目を覚ますと、そこは見慣れた自分の部屋だった。いつ、どうやって帰ってきたのか、全く記憶にない。
 昨日の出来事は、実は全部夢オチだったんじゃ――そんな思いが去来する。
 しかし、アメリア先生とのめくるめく一夜は、脳膜にしっかりと焼き付いたまま離れていない。くっきりとした感触もそのままで。
 事実を確かめようにも、本人の目の前で、「もしかして、俺たち、ヤっちゃいました?」などと聞こうものなら――
おそらく、それが辞世の句となってしまう可能性が高い。
 というわけで、悶々とした想いを抱えたまま、週末が終わってしまったのだった。

 ――と、始業のベルが学校中に響き渡る。
 同時に、担当であるアメリア先生――
どうしようか迷ったのだけれど、結局レオンは、本日もアメリア先生の講義を賜ることにしたのだった――が入ってきた。
 服装も、表情も、先週と何一つ、変わったところは見当たらない。
ああ、あの事件は、やっぱり俺の妄想だったかな――
レオンはこっそりと、嘆息を漏らした。
「はーい皆、週末はしっかり勉強してたかなー? それを確認するために、さっそく抜き打ちテストをしまーす」
 アメリアの言葉に、えー、と教室から阿鼻叫喚のうめき声が聞こえてくる。
 アメリアは、聞く耳持たず、という感じで、容赦なく、各人に問題用紙と解答用紙を配っていった。もちろん、レオンの元にも。
 レオンは何気なくそれを受け取って――妙な違和感に気が付いた。自分のだけ、問題用紙が1枚多いことに。
 先生、配り間違えてますよ――と言おうとして、はた、とレオンは気が付いた。
よく見ると、それは、アメリア先生手書きの――他の問題用紙は活字だったにも関わらず、だ――問題用紙だった。
 レオンだけの問題用紙。それは、アメリアからレオンへの、特別な問題用紙。

Q.次のアルファベットを、意味が通じるように並べ替えなさい。
<ヒント>これからの、あたしとレオンくんの関係です

【解答群】
L、O、V、E、R、S

 レオンは回答欄に、この順で解答を書き連ねた――そばに、「これからも宜しく」と付け加えて。

 ちなみにこの後、有頂天になったレオンは、またもや爆睡をかましてしまい。
 アメリア先生に、今度こそみっちり、補習を受けさせられる羽目になったのだが……
 まぁ、それは別の話。

〜FIN〜


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