マジックアカデミーの男子生徒ロッカー室の一角。
赤髪の少年―レオンが、自身のマジックペット
(赤く小さな竜。名前は『ドロップ』)と、何か揉めている。
「だから言ってんじゃんか!ドロップ、お前はまだ、【ちび】なんだよ!!」
『ムキーッ!!(ちびじゃないぞー!!)』
「何だよ、そんなにムキになるなよ!!」
『グゥゥッ…(もうイヤだ…)』
『ギャー!!(出て行ってやるー!!)』
「ど、ドロップ!!待てってば!!」
レオンはロッカー室を出て、慌ててドロップを追うが、
飛行されては人間のかなう筈もない。
レオンは仕方なく校舎に戻り、廊下を歩いた。
「そう言えば、治癒魔法の試験、2日後だな…
図書室で勉強するか…」
普段から、各教科担当に【おしおき】を受けているレオンは、
少しだけ意を決して、図書室へ向かった。

 図書室では、昼休みを利用して勉強をしている生徒達が、
ちらほら見える。レオンは、その中の一人の少女に声を掛けた。
「よっ、クララ!」
クララと呼ばれた少女は、三つ編みの茶髪を揺らして顔を上げた。
「レオンさん、どうしたんです?」
「ちょっと勉強しようと思ってさ…ここ座って良いか?」
「どうぞ。そう言えば、次はフランシス先生の授業ですね」
「そうだっけ?まだ10分位あるよな…クララ、ちょっと聞いていいか?」
レオンは、ズボンのポケットから、呪文が書かれた紙切れを
取り出し、クララに見せた。クララはそれを読んで微笑んだ。
「今度の試験の治癒魔法、ですね。『大地よ、傷つき苦しむものへ、力を与えたまえ』―レオンさん、唱えてみて下さい」
レオンは指を組み、そのまま自身の顔の前に当て、目を閉じて呪文を唱えたが。
「何も起きないぜ??」
「おかしいですね。ちょっと指の組み方を見せて下さい…」
クララはレオンの指の上に自身の手を乗せ、レオンの指の組み方を直した。レオンは、もう一度呪文を唱えた。同時に、周囲にクリーム色の光が溢れ、やがて治まった。レオンはクララの手を取って笑った。
「サンキューな、クララ!」
「あっ…は、はい!!」


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